「ストックオプションを導入したいが、税制適格の要件がよくわからない」――そんな経営者・人事担当者向けに、税制適格ストックオプションの基本から申請手続き・注意点まで、図解とともにわかりやすく解説します。
税制適格ストックオプションとは
ストックオプションとは、あらかじめ決められた価格(行使価格)で自社株を購入できる権利のことです。株価が上昇した際に権利を行使すれば、その差額が利益になります。スタートアップを中心に、優秀な人材の獲得・定着や役員・従業員のモチベーション向上を目的として広く活用されています。
そのなかでも、租税特別措置法第29条の2が定める要件を満たしたものが「税制適格ストックオプション」です。要件を満たすと、権利行使時に課税が発生しない(株式売却時まで課税が繰り延べられる)という大きな税務上のメリットがあります。
通常のストックオプションとの違い
通常のストックオプション
権利行使時給与所得として課税
税率最大55%(総合課税)
株式売却時譲渡所得として課税
要件特になし
税制優遇あり
税制適格ストックオプション
権利行使時課税なし
税率20.315%(分離課税)
株式売却時譲渡所得のみ課税
要件7つの要件を充足
例)行使価格100万円・行使時株価500万円の場合、差益400万円に対する税負担は通常型で最大約220万円、税制適格型で約81万円と大きく異なります。
通常のストックオプション(最大55%課税)
税制適格ストックオプション(20.315%課税)
※通常型は所得税・住民税の最高税率(55%)で試算。実際の税負担は所得状況により異なります。
税制適格になるための要件7つ
要件 01
付与対象者は会社の取締役・執行役・使用人であること(監査役・大口株主は対象外)
要件 02
有償で発行しないこと(無償で付与すること)
要件 03
行使価格は付与契約時の株価以上であること
要件 04
権利行使は付与決議から2年後〜10年以内の期間内に行うこと
要件 05
年間権利行使価額の合計が1,200万円以下であること
要件 06
譲渡制限が付されていること(第三者への譲渡禁止)
要件 07
権利行使で取得した株式は証券会社等に保管・管理されること
⚠ 注意:2024年税制改正のポイント
2024年の税制改正により、スタートアップ向けに年間行使上限が最大3,600万円(社外高度人材は最大3,600万円)に拡大されました。また、設立5年未満の非上場企業については要件が一部緩和されています。顧問税理士・弁護士への確認を推奨します。
付与から行使までの流れ
STEP 1
株主総会決議
発行枠・行使条件を決定
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STEP 2
取締役会決議
具体的な付与条件を確定
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STEP 3
付与契約締結
対象者と個別契約
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STEP 4
2年の待機期間
付与決議から2年後以降に行使可能
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STEP 5
権利行使・株式取得
証券会社口座で管理
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STEP 6
株式売却・課税
売却時に譲渡所得として申告
導入するメリット・デメリット
税負担が大幅に軽減
行使時の課税がなく、売却時も20.315%の分離課税のみ。通常型と比べ税負担を大きく圧縮できます。
優秀な人材の獲得・定着
キャッシュアウトなしで報酬を提供でき、株価上昇へのインセンティブが生まれます。
会社のキャッシュを温存
現金報酬の代替として機能するため、資金が限られるスタートアップに特に有効です。
デメリット・注意点
要件が厳格なため、一つでも逸脱すると税制非適格となります。また株価が行使価格を下回った場合は権利行使のメリットがなく、株式希薄化(ダイリューション)により既存株主の持分割合が低下します。設計・管理は専門家と連携して行うことを推奨します。
よくある質問
非上場企業でも税制適格ストックオプションは使えますか?
はい、利用できます。非上場企業の場合は株価算定(DCF法・純資産法等)が必要で、その評価額が行使価格の基準になります。上場企業と比べ株価算定の手間がかかる点に注意が必要です。
監査役に付与することはできますか?
税制適格の対象外です。監査役は「使用人」にも「取締役・執行役」にも該当しないため、付与しても税制適格にはなりません。通常のストックオプション(税制非適格)として設計することになります。
行使価格はどう決めればいいですか?
付与契約時の株価以上にする必要があります。非上場企業の場合は第三者機関による株価算定レポートを取得するのが一般的です。行使価格が低すぎると要件を満たさなくなるリスクがあるため、税理士・弁護士への相談を推奨します。
退職した場合、権利はどうなりますか?
付与契約の内容によります。多くの場合、退職時に未行使の権利は失効する条項が設けられています。一方で、一定期間の行使を認める設計にすることも可能です。退職時の扱いは付与契約書に明記しておくことが重要です。
まとめ
この記事のポイント
- 税制適格ストックオプションは権利行使時の課税がなく、売却時のみ20.315%の分離課税
- 通常型と比べ税負担が大幅に軽減されるが、7つの要件をすべて満たす必要がある
- 2024年改正でスタートアップ向けに年間行使上限が最大3,600万円に拡大
- 非上場企業でも利用可能。ただし株価算定が必要
- 設計・管理は税理士・弁護士など専門家との連携が不可欠
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